『ジークアクス』に蘇った“緑のおじさん”──シャリア・ブルと木星の記憶、そしてキケロガの真意

ガンダム特集
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「彼はもう、いないはずだった」──。

それなのに2025年、私たちはまたあの“緑のおじさん”に心を撃たれている。

『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』、通称『ジークアクス』。この新たなガンダム作品の中で再び脚光を浴びたのが、『機動戦士ガンダム』第39話にのみ登場したシャリア・ブルだ。



「木星帰りの男」──この一言に込められた重みと、ブラウ・ブロという異形の兵器。そして『ジークアクス』で彼が乗るキケロガという名の新たな機体。すべてが彼の「記憶」を呼び覚まし、物語の深層へと私たちを導いていく。

この記事では、かつて“たった一話”で退場した彼が、なぜ今、再び物語の中心に戻ってきたのか。その意味を、富野ガンダムからジークアクスへと連なる「感情の血流」として紐解いていこう。

（※アイキャッチ画像はイメージです）

 

1. 「シャリア・ブル」とは誰か？──“緑のおじさん”の正体

「緑のおじさん」。その愛称には、ただ愛されるキャラクター以上の重層的な響きがある。彼の名は シャリア・ブル。初代『機動戦士ガンダム』第39話でたった一度だけ登場し、その緑の装甲と飄々とした佇まいで視聴者の記憶に刻まれた男だ。平凡ではないその存在が、今、5年の時を経て、『ジークアクス』に再び登場した。

🌌 ニュータイプ社会で異彩を放つ“28歳の大人”

彼が登場した当時、ニュータイプ候補生のほとんどは少年少女だった。28歳のシャリアは群を抜く“大人”で、成熟した振る舞いと洞察力で一線を画していた。その落ち着きは、ファンの間でも“老人役感”と称され、憎めない魅力に昇華されていった。

🟩 なぜ「緑のおじさん」なのか？

シャリアは緑色のモビルアーマー「ブラウ・ブロ」のパイロット。その外見から“緑”との結びつきが強調され、親しみを込めた“おじさん”という呼び名が定着した。その愛称は、単なる見た目ではなく、彼の“人間らしさ”と“ずっしりした存在感”を示すエモーショナルな印象でもある。

2. 『機動戦士ガンダム』での登場と「ブラウ・ブロ」の衝撃

1979年のTVアニメ『機動戦士ガンダム』において、シャリア・ブルが登場したのはたった一話──第39話「ニュータイプ、シャリア・ブル」だった。しかし彼の登場は、シリーズの根幹に流れる“ニュータイプ論”を鮮烈に浮かび上がらせるほどの重みを持っていた。

⚡ 初見でわかる実力者──ララァを見抜く直感

シャリアはキシリアの命でニュータイプ部隊に配属されたが、その場でララァ・スンの特異な能力にすぐ気づく。その洞察は、感覚の鋭さ＝ニュータイプとしての才能の証明でもあった。軍事的評価ではなく、人間の本質を一瞬で見抜く力──それが、彼の本質だった。

🌀 ブラウ・ブロのオールレンジ攻撃と「死に場所」

彼が操るモビルアーマー「ブラウ・ブロ」は、ビット兵器を用いた全方位攻撃が可能な“異形の兵器”だった。アムロ・レイのガンダムに対し、単騎で戦いを挑んだシャリアは、最初から「死に場所」を求めていたのかもしれない。シャアは彼の最期をそう評した──それは戦士としての美学か、それとも政治に使い潰された一駒だったのか。

3. 木星帰りの男──「ヘリウム3」が意味するもの

「木星帰りの男」──この異名は、単なる経歴の紹介ではない。それは、極限の宇宙空間を生き延びた者への“敬意”であり、人知を超えた覚醒の引き金でもある。シャリア・ブルは、地球から9億kmの彼方に存在する木星圏で、命懸けの航行任務を果たしてきた人物だ。

☀️ ヘリウム3──モビルスーツ文明の心臓

モビルスーツの稼働には「ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉」が必要であり、その核融合燃料がヘリウム3である。月や地球では微量しか得られないこの資源は、木星の厚い雲の中にこそ豊富に存在していた。

木星船団の任務は、往復に4～5年かかる危険な旅。閉鎖空間での長期生活、精神崩壊と隣り合わせの日々──。そうした極限環境にさらされたシャリア・ブルの中で、“常人には到達しえない感受性”が目覚めたと考えられている。

🛰️ 「木星帰り」はなぜニュータイプを生むのか？

ニュータイプは戦争の中から偶発的に生まれたのではない。孤独、沈黙、宇宙との一体感──それらが人の内面に変化を促す。「木星帰り」は、そんな“地球的な常識を脱した存在”の象徴でもある。

シャリア・ブルが他のニュータイプとは異質な“深み”を持っていたのは、きっとその宇宙的孤独を知っていたからだ。

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4. 『ジークアクス』で描かれたシャリア・ブルの生存ルート

本来は39話で戦死した“はず”の男が、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』では生きていた──。それは「もしもの一年戦争」を描く『ジークアクス -Beginning-』というパラレル・ワールドにおいての出来事だ。しかし、そこに描かれたのは単なる生存ifではなかった。“彼の未練”と“思想”が、明確な意味を持って蘇ったのだ。

🔧 キケロガを駆る“再来のニュータイプ”

シャリアは、ブラウ・ブロに酷似した新型モビルアーマー「キケロガ」に乗って登場。『ジークアクス』では、一年戦争末期においてシャアの右腕として大きな戦果を上げた後も生き延びている。ここで注目すべきは、彼が戦死せず、“思念の継承者”としての役割を担っているという点だ。

🪐 “刻が見える”──シャアの最後の言葉を継ぐ者

『ジークアクス』世界では、ソロモン崩壊の余波でシャアが行方不明となり、その直前の「刻が見える」という言葉を、唯一聞いた人間がシャリア・ブルであった。この一言は、富野ガンダムにおいて“ニュータイプの覚醒”を象徴するもの。その証人となったことで、シャリアは「次なる時代の鍵」を握る存在として描かれている。

物語は、かつて“死に場所”を求めた彼が、今度は“未来を探す者”になっていることを暗示している。

5. 新型モビルアーマー「キケロガ」とは何か？

『ジークアクス』に登場する「キケロガ」は、旧来のブラウ・ブロを彷彿とさせるシルエットと機能を持ちつつ、その存在意義は単なる“リメイク機体”にとどまらない。それはまるで、シャリア・ブルの記憶と進化を具現化した“思念の器”のようでもある。

🎯 ブラウ・ブロの“亡霊”か、未来への継承か

キケロガは、ブラウ・ブロと同様のオールレンジ攻撃を可能とするビット兵器を搭載しているが、戦術機動性や制御能力は格段に向上している。また、パイロットとの“感応”を前提としたインターフェース構造を採用しており、ニュータイプ専用機の進化形として設計されている。

このテクノロジーの進化は、「人と機械が心で繋がる」というニュータイプ思想の延長線にある。キケロガは、かつての「死に場所」だった機体を、“共鳴”の武器へと変貌させた存在なのだ。

🔍 名前の由来に宿る示唆

“キケロガ”という名前は、ギリシャ哲学者キケロに由来する可能性があるとも噂されている。もしそうであれば、それは「知性と倫理の対話兵器」としての意味を持つ。単なるモビルアーマーではなく、“言葉を持たぬ意志”として、戦場で語る存在──。

シャリア・ブルの生存とともに現れたこの機体は、「語られなかった想い」「成就しなかった思想」の延長線にあり、彼の人生そのものが変換された姿と言えるだろう。

6. なぜ彼は“鍵”になるのか──行方不明のシャアと「刻が見える」

『ジークアクス』において、シャリア・ブルが“鍵”として注目される最大の理由──それは、シャア・アズナブル最後の言葉「刻が見える」を聞いた“唯一の生存者”だからだ。この一言は、ニュータイプ覚醒の象徴であり、『ファースト』ガンダムから連綿と続く“人間進化”の主題そのものである。

🚀 シャアの不在が意味するもの

『ジークアクス』の時系列では、ソロモンの崩壊とともにシャアが消息を絶っている。その「不在」は、物語の“空白”として機能し、人々の意志がどこへ向かうべきかを問いかけている。そんな中で、「刻が見える」を最後に耳にしたシャリアの存在は、シャアの“意志の継承者”とみなされ始める。

🧬 意志のリレー──思念から人類へ

『ジークアクス』では、物語の中盤以降、シャリアが指揮する戦艦ソドンが「赤いガンダムとシャアを探す旅」に出ている。これは単なる捜索任務ではなく、“ニュータイプの理念が次に宿る場所”を探す巡礼にも見える。

刻を見るとは、未来を感じること。そして、自分の存在が“次の世界”にどう繋がるかを意識することだ。シャリア・ブルという人物が、単なる生存キャラクターではなく、“思想のリレー走者”として描かれる理由はここにある。

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7. シャリア・ブルという存在が問いかけるもの

かつては一話限りの“ゲストキャラ”だったはずの男が、いまやシリーズの核心へと接続されている──それは偶然ではない。シャリア・ブルという存在は、ガンダムという作品群が繰り返し問いかけてきた「人間は変われるのか？」というテーマの、静かなる応答なのだ。

🧭 富野ガンダムにおける“死”と“語り”の意味

富野由悠季が描くガンダム世界では、死は終わりではない。むしろ“思念”として、戦場や人の心に残り続ける。ララァ、アムロ、シャア、そしてシャリア──彼らは死後も「言葉にならない何か」を残していく。

シャリアの再登場は、この「死の向こう側にある対話」の延長線であり、ニュータイプが提示した“共感”と“継承”の可能性を再照射する装置でもある。

 

💠 少年でも少女でもない“第三の声”

『ジークアクス』の主役は若き少女アマテだが、そこに父のようでも、兄のようでもない“緑のおじさん”が静かに立つことで、物語は単なる成長譚ではなくなる。シャリア・ブルは、既に傷つき、過去を抱え、それでも希望を信じる大人の象徴だ。

それは現代における、成熟したオタク像とも重なる。そして今、その彼が再び語りかけているのだ──「まだ終わっていない。物語は、続いている」と。

まとめ：「死んだはずの男」が今なお“希望”を運ぶ理由

かつて、『機動戦士ガンダム』で静かに散っていったシャリア・ブル。彼はほんの一話に過ぎない登場で、戦死し、語られず、忘れられていくはずの存在だった。

しかし『ジークアクス』は、その“名もなき死者”を再び呼び戻した。ただのファンサービスではない。そこには、死者の記憶を、今を生きる者がどう受け継ぐかという問いが込められている。

木星の極限環境、ブラウ・ブロの戦い、そしてキケロガでの再登場──すべてが彼の「未完の対話」の続きだった。そして彼が今追い求めるのは、かつての同志・シャアの“意志”という名の希望だ。

「死んだはずの男」が鍵となる世界。その姿はまるで、すでに失われたと思っていた自分の理想が、もう一度息を吹き返すような感覚を私たちに与える。

だからこそ、私たちは今日も、彼の背中に心を重ねるのだ。物語の続きを、彼とともに見届けるために。

この記事のまとめ

  • 『ジークアクス』でシャリア・ブルが再登場
  • かつての「一話限りの男」が物語の鍵に
  • ブラウ・ブロに似た新型機「キケロガ」に搭乗
  • 「木星帰り」とは命懸けの任務経験者の称号
  • ヘリウム3採掘がモビルスーツ動力源に直結
  • シャアの最後の言葉「刻が見える」を継承
  • 『ジークアクス』では生存し未来を探す立場に
  • 哲学的思想と戦士の誇りを併せ持つ存在
  • “死んだはずの男”が希望の象徴として描かれる

🌌 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

“たった一話”の登場から45年──シャリア・ブルというキャラクターに再びスポットが当たった今、あなたは何を感じましたか？

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