NHK土曜ドラマ『ひとりでしにたい』が話題！原作・カレー沢薫×脚本・大森美香×主演・綾瀬はるかの最強タッグ｜あらすじ・キャスト・見どころ紹介

綾瀬はるかが体現する“等身大の終活女子”

主人公・山口鳴海を演じるのは、日本を代表するトップ女優・綾瀬はるか。清潔感、自然体、そしてどこか抜け感のある魅力で、世代を問わず圧倒的な支持を集める彼女が、今回挑むのは“終活”を前向きに捉えようと奮闘する30代後半の独身女性という、リアルで難しい役柄です。

綾瀬さんの最大の魅力は、「演じているように見せず、まるでその人が実在しているかのように自然に映る」ところ。鳴海の迷い、葛藤、ちょっとした見栄や寂しさ――それらを、言葉にせずとも目線や呼吸で伝える表現力は圧巻です。

特に印象的なのは、婚活に疲れた帰り道にぽつりと「なんでこんなに頑張ってるんだろう」と呟く場面。
誰もが経験したことのある「報われなさ」や「孤独」の感情を、綾瀬はるかだからこそ成立させられる“繊細さ”と“透明感”で描いています。

綾瀬さん自身もインタビューで「この役を通して、自分らしさってなんだろうって改めて考えるようになりました」と語っており、鳴海と彼女の人生が重なる部分も少なくないようです。

誰かと比べて落ち込んだり、「それなりの人生」で済ませようとしたり……そんな弱さも全部引き受けたうえで、前を向いて歩き出す鳴海を、飾らずに、そして美しく演じきる綾瀬はるか。
彼女の存在が、このドラマに圧倒的な説得力を与えています。

佐野勇斗（M!LK）が演じる「令和のこじらせ男子」

綾瀬はるか演じる鳴海の人生に、言葉のナイフのように切り込んでくる年下の同僚――那須田優弥。この“ちょっと厄介だけど妙に真理を突いてくる男”を演じるのが、M!LKの佐野勇斗さんです。

那須田は都庁から出向してきたエリート。冷静で知的、でもどこか他人事のように話す“こじらせ感”が特徴です。彼のセリフは、時に鋭く視聴者の価値観に突き刺さるものばかり。
たとえば「結婚すれば安心って、昭和の発想ですよね？」という言葉。
それはまるで、視聴者自身が見ないようにしてきた現実を、鏡のように映し出すようです。

佐野勇斗さんは、その一見冷たく感じる言葉の裏に、不器用な優しさと不安定な心を絶妙ににじませています。
無表情に近い顔から、ふと漏れる小さなため息や戸惑いの目線に、彼自身もまた何かに迷っていることが見えてくるのです。

実はこの那須田、鳴海に密かに好意を寄せているという設定が、物語に静かな緊張感をもたらします。
それは直球の恋愛感情ではなく、「こんな人となら一緒に“終活”を考えてみたい」と思わせるような、令和的な関係性。

俳優としても着実にキャリアを重ねてきた佐野さん。今回は“恋愛の型にハマらない、でもどこか気になる存在”という今の時代のリアルな男性像を見事に演じ切っています。

そして何より、鳴海と那須田のチグハグで鋭い会話劇こそが、このドラマの最大の見どころの一つ。
正反対のようで、実は似た孤独を抱えるふたりのやり取りに、観る者はきっと何度も心を揺さぶられるでしょう。

國村隼＆松坂慶子が演じる“昭和の夫婦”の変化と再生

山口和夫と山口雅子。
鳴海の両親として登場するこの夫婦は、まさに“昭和の象徴”ともいえる存在です。夫は家計を支える“仕事人間”、妻は家庭を守る“専業主婦”。でも、もうその役割分担だけでは生きていけない時代になった――それに気づけるかどうかが、ふたりの分かれ道になります。

父・和夫を演じるのは國村隼。「男は台所に立たない」「結婚して一人前」という昭和的価値観をガチガチに持った頑固な父親です。定年退職後は「家にいても空気のような存在」になってしまい、娘・鳴海との会話もどこかぎこちない。けれど、那須田との出会いをきっかけに、少しずつ変化していく姿に、年齢を重ねた人間の“再スタート”の希望が宿ります。

一方、母・雅子を演じるのは松坂慶子。夫に尽くし、家庭を支えてきた一方で、義姉から「自立していない女」と揶揄された過去を引きずり続けています。今は密かに“ある終活計画”を進行中。まさかのヒップホップダンスに夢中になる姿には、母親像を超えた“ひとりの人間”としての生き直しが見えてきます。

この昭和夫婦が本作で担うのは、単なる“親世代の添え物”ではありません。彼らの価値観の揺れと変化が、鳴海の終活の旅路に重なり、“世代を超えた生き方の再定義”というテーマを、より深くしているのです。

國村隼と松坂慶子という、日本映画・テレビ界を代表するベテラン俳優が演じるからこそ、この夫婦には重みと滑稽さ、そして哀しさと愛おしさが絶妙なバランスで同居しています。

「変われない」と思っていた大人たちが、ほんの少し勇気を出して“変わろうとする”姿。そこには、このドラマが描こうとしている「終活＝人生をあきらめる準備ではなく、もう一度、生き直す準備」というメッセージが、深く刻まれているのです。

原作『ひとりでしにたい』とは？｜カレー沢薫が描く“リアルな不安”

ドラマ『ひとりでしにたい』の原作は、カレー沢薫による同名漫画。
「死」と「笑い」を巧みに融合させた新感覚の終活ギャグマンガとして話題を呼び、2023年には文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞しました。

主人公・鳴海の目線で描かれる世界は、極めて私たちに近い“日常”です。SNSの中で誰かの幸せに焦り、親の老いに不安を感じ、職場での距離感に疲れ、それでも「まあ大丈夫だろう」とやり過ごしてきたリアルな感情が、誇張されずに丁寧に描かれています。

作者・カレー沢薫さんは、「描きたいことは特にない。でも将来に対する漠然とした不安だけはある」と語っており、そこから生まれたこの作品には、“答えの出ない問い”を描き続ける覚悟があります。

作中では「終活＝人生の締めくくり」ではなく、“生き方の選び直し”として描かれており、結婚、親との関係、孤独死といった重いテーマを、ユーモアを交えながら軽やかに、しかし真剣に掘り下げていきます。

ドラマ化にあたり、脚本を手がけるのは『あさが来た』『青天を衝け』など人間ドラマに定評のある大森美香。原作の世界観を壊すことなく、さらに映像だからこそ描ける人間関係の“間”や“空気”を巧みに脚色しています。

「死を描くことで、むしろ生が輝く」――
カレー沢薫作品の根底にあるこの哲学が、ドラマ版でもしっかりと受け継がれており、視聴者に“生きる勇気”をそっと手渡す物語になっています。

『ひとりでしにたい』が綾瀬はるか主演でドラマに✨

終活マンガとして読み始めたらどハマりし、去年一気に読んだ。
普段マンガ読まないしドラマも観ないんけど、これは観よう♪

✍️NHK6月21日(土) 土曜 夜10：00〜10：45#終活#終活アドバイザーhttps://t.co/oP7TyJJOr0 pic.twitter.com/YpvivlZ4YJ

— aco🐾@脳卒中で右片麻痺リハビリ中 (@aco_k0625) May 30, 2025

文化庁メディア芸術祭優秀賞も納得の作品世界

2023年、原作『ひとりでしにたい』は第26回文化庁メディア芸術祭マンガ部門 優秀賞を受賞しました。
受賞理由は、「重くなりがちな“終活”というテーマを、ユーモアと皮肉、そして圧倒的リアリティで包み込み、社会に対する新しい視点を提示したこと」。

読者は、主人公・鳴海のセリフに思わず「それ、わかる」と頷きながらページをめくっていきます。
特別なドラマがあるわけではない。ただ、「今のままで本当にいいのか」と考える瞬間が繊細に、そしてちょっと笑える形で描かれている。それこそが、本作の最大の魅力です。

特筆すべきは、カレー沢薫さんの圧倒的な観察眼と冷静な距離感。
結婚、親との関係、老後、キャリア、孤独死――誰もが直面し得る問題を、断定せず、処方箋も出さず、ただ「こういう人もいるよね」とそっと寄り添う姿勢が、作品に深みと共感を生んでいます。

メディア芸術祭の審査員も「これは終活ではなく、“生き直しの物語”である」と評しました。
まさにその言葉通り、本作は「人生に正解がないことの正しさ」を教えてくれる、現代人にとっての“人生の鏡”なのです。

ドラマ化によって、この「静かな叫びのような物語」がさらに多くの人の心に届くことでしょう。
笑いながら、ふと我に返る。そんな読後感――いや、視聴後感こそが、この作品世界の真骨頂です。

原作者コメントに込められた、現代人へのメッセージ

原作者・カレー沢薫さんは、この作品についてこう語っています。
「描きたいことは特にない、でも将来に対する漠然とした不安だけはある――」
この言葉にこそ、現代を生きる私たちの“本音”が詰まっています。

「いつかは死ぬ」ことは、誰もが知っている。でもそれは、漠然としすぎていて、向き合うには重く、考えるにはつかみどころがない。
カレー沢さんは、そんな“触れづらいテーマ”を、ユーモアと皮肉、そして極めて人間的な観察力で物語へと昇華しました。

コメントの中で特に印象的なのは、「結婚したい相手にゼ◯シィを見せるように、終活させたい相手にはこの作品を」という言葉。
この比喩に思わず笑ってしまう人もいるでしょう。でも同時にそこには、“死ぬ準備＝生き方の選択”という、本質的で優しい提案が込められているのです。

終活というテーマは、決して「人生をあきらめる」ことではありません。
むしろ、「どう終わりたいか」を考えることで、「どう生きたいか」にたどり着く――それが、この作品の根っこにある哲学です。

カレー沢薫さんのコメントは、特別な人生を送る誰かの話ではなく、「特別ではない」私たちの小さな日々にそっと光を差し込むものです。
不安や迷いに包まれた人たちに、「考えてもいいし、考えなくてもいい。でも、もし少しでも考えてみたいなら、ここに物語があるよ」と優しく語りかけてくれる――そんなメッセージが込められています。

脚本・演出・主題歌にも注目！

『ひとりでしにたい』がただの「終活ドラマ」に留まらず、人の心をそっと揺さぶる“人生讃歌”として成立しているのは、脚本・演出・音楽の三位一体の力があってこそです。

脚本を担当するのは、『あさが来た』『青天を衝け』などで知られる名手・大森美香さん。
原作の持つ空気感を壊さず、むしろ登場人物たちの息づかいや“間”にまでこだわりを見せ、映像化にあたって物語の余白を豊かに埋めています。

「終活」という重たいテーマに真っ向から向き合いながらも、視聴者を笑わせ、泣かせ、明日を生きようと思わせる脚本は、まさに大森さんの真骨頂。
キャラクター同士の会話には「意地悪さ」と「やさしさ」が同居し、観る者の胸をチクチクとつついてきます。

演出は、石井永二・熊坂出・小林直希といった実力派が担当。
特に注目すべきは、都会の無機質さと人間の温かさを対比させた映像美です。
何気ない部屋の明かり、沈黙の中の眼差し――細部にまで行き届いたカメラワークが、視聴者の“感情の温度”を静かに上げてくれます。

そして、主題歌を担当するのは、唯一無二の表現者・椎名林檎。
新曲「芒に月（すすきにつき）」は、人生の“影”と“光”を共に受け入れるような、深く静かな情緒に満ちています。

人が生きるとはどういうことか。死を恐れながら、どう前を向くのか。
その答えを直接語らず、音楽という“余韻”で残してくれる椎名林檎の歌が、ドラマのラストに重くも優しい余波を残すことでしょう。

物語の芯を支えるのは、演者だけではありません。
見えない部分で“伝える力”を注ぎ込んだ脚本家・演出家・音楽家たちの想いこそが、このドラマを人生の宝物のような作品へと昇華させています。

脚本・大森美香が描く“笑って泣ける”人間ドラマ

『ひとりでしにたい』の脚本を手がけるのは、大森美香。
朝ドラ『あさが来た』や大河ドラマ『青天を衝け』など、“人物の内面を丁寧に掘り下げる脚本家”として高く評価されてきたベテランです。

大森さんの脚本の魅力は、「正しさ」や「成功」を押しつけないところ。
どんな人も間違いながら生きていて、弱さやズルさもあって当然。それを隠さず、むしろ人間らしさとして描く手腕に、視聴者は深く共感してしまうのです。

『ひとりでしにたい』でも、主人公・鳴海の選択や言動には、時に「痛い」瞬間があります。
でもその“痛み”すらも包み込むように描くのが、大森美香脚本の力。
誰かに寄りかかる弱さも、自分を嫌いになる夜も、それでもまた明日を迎える人間の姿を、笑いと涙で綴っていきます。

大森さんは本作について、「思わず笑ってしまって、最後は泣ける。そんな作品になるはず」とコメントしています。
それは、ただ感情を操作するという意味ではなく、“人間のありのまま”に向き合った結果、生まれる自然な涙と笑いということ。

登場人物たちの“空気感”や“間”を大切にした会話劇にも、大森脚本の巧みさが現れています。
何気ない沈黙、すれ違い、気まずさ……そこに込められた感情を視聴者が“感じ取れる”ように描く演出は、まさに名人芸です。

大森美香という脚本家がこの作品を手がける意味――
それは、「終活」というテーマを、人生を肯定する物語として届けてくれると信じられるから。
観終わったあと、“誰かにやさしくなりたくなる”――そんな脚本がここにはあります。

椎名林檎の主題歌「芒に月」が作品に添える余韻

ドラマ『ひとりでしにたい』の主題歌を手がけるのは、椎名林檎。
独自の世界観と詩的な感性で、“言葉では言い尽くせない感情”を音楽に変えることのできる、唯一無二の表現者です。

新曲「芒に月（すすきにつき）」というタイトルからも、秋の夜風のように静かで、どこか切ない情景が浮かび上がります。
「芒」は枯れゆく草の象徴、「月」は照らす光。まるで、人生の終わりとその中に宿る美しさを、そっと並べて語りかけてくるようです。

椎名林檎の音楽には、聴く人の感情を丸ごと包み込む“静かな力”があります。
本作のように“終活”をテーマにしたヒューマンドラマにおいて、派手なメロディよりも、余白を残した旋律と静かな余韻こそが、物語のエンディングにふさわしい。

鳴海がひとりで帰る夜道、ふと見上げた空に浮かぶ月――
そんなワンシーンを想起させるような、詩的で映像的な主題歌は、視聴者の心に長く残る“音の記憶”となるでしょう。

ドラマの最終回、静かに流れる「芒に月」とともに、鳴海の背中が映し出されたとき。
私たちはきっと、自分自身の生き方や、誰かとの別れを思い出すはずです。
音楽と物語が交差するその瞬間に、本作は“人生を語るドラマ”として完成するのです。

まとめ｜『ひとりでしにたい』は誰もが観るべき“人生の指南書”

終活。孤独死。結婚しない人生。
どれも、耳にした瞬間に少し心がざわつくワードばかりです。
けれど『ひとりでしにたい』は、それらをネガティブな現実として突きつけるのではなく、ひとつの“問い”として差し出してくれる作品です。

「どう生きたい？」
「何を大切にしたい？」
「誰と過ごしたい？」
このドラマは、その答えを押しつけることは決してしません。
むしろ、自分の中にある“まだ名前のない気持ち”を探すきっかけを、笑いや涙と一緒にプレゼントしてくれるのです。

綾瀬はるかの自然体な演技、佐野勇斗の鋭くて優しい存在感、國村隼と松坂慶子のリアルな夫婦像。
そして、大森美香の脚本と椎名林檎の音楽が織り成す世界観は、ただのドラマではなく、人生をそっと見つめ直すための“指南書”のように感じられます。

ひとりで生きることも、誰かと生きることも、どちらも間違いではない。
でも、どうせなら「自分で選ぶ人生」を生きたい――
そんなささやかな願いに、このドラマは優しく背中を押してくれるはずです。

『ひとりでしにたい』は、あなたの“これから”の生き方にそっと寄り添うドラマ。
ぜひ、週末の夜に、心を空っぽにして観てみてください。
そしてエンディングの余韻があなたに何かを残したなら――
それが、このドラマと、あなた自身との大切な“対話”の始まりになるはずです。

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