「【ガンダム ジークアクス】竹が描くキャラデザの真髄──“ポケモン”から“新世代ガンダム”へ」

ジークアクスのキャラクターデザインに込められた“竹”の哲学

それは、「違和感」から始まった。
ガンダムファンがジークアクスのキャラクターを初めて目にした時、多くが口を揃えて言った。「これ、本当にガンダムか？」と。
だが、その違和感こそが“竹”というアーティストの「静けさ」と「品格」を映し出す鏡だった。

竹の「静けさ」と「品格」がジークアクスでどう表現されているか

竹の描くキャラクターは、決して感情を「顔芸」で誇張しない。
目元のわずかな陰影、唇の微かなカーブ、肩の力の抜け具合──そうした“さざ波”のようなニュアンスが、彼のキャラクターに“静けさ”を宿らせる。
その静けさは「品格」となり、ガンダムが抱える戦争や人間ドラマに“気品ある余白”を与えているのだ。
ジークアクスでは特に、「孤独」と「覚悟」を背負うキャラクターたちの内面が、竹独自の抑制された線で丁寧に語られている。

デフォルメを排し、“感情の線”で描くスタイル

一般的なアニメキャラクターデザインでは、「デフォルメ（記号化）」が感情表現の武器となる。
しかし竹は、むしろ「線そのものが感情を語る」というアプローチを取る。
顔のパーツを誇張せず、「リアルな骨格」を意識しながらも、一本一本の線に「情念」を込める。
その結果、ジークアクスのキャラクターたちは、絵としては静かでありながら、“内なる叫び”を秘めた存在として立ち上がる。

サイバーな質感と“生命感”の共存

ジークアクスの世界観は、サンライズとスタジオカラーのコラボレーションによって、サイバーで硬質なビジュアルが際立つ。
だが、その中で竹が描くキャラクターは、「触れられる皮膚感」を持ち続けている。
メカニカルな世界観の中で浮き上がる“温度のある線”──それが、竹の哲学だ。
特に、キャラクターの瞳や手の表現において、「生命の脈動」が感じられる瞬間は、ガンダムというIPに“人間臭さ”を取り戻す鍵となっている。

竹が手がけた過去作品──ポケモン・FGO・刀語との比較

“ジークアクスのキャラデザはガンダムっぽくない”──そう語る声は、裏を返せば「竹という作家性が明確に出ている」ことの証だ。
だが、竹はこれまでも作品ごとに異なる顔を見せてきた。ポケモン、FGO、刀語──それぞれでどう“線”を操ってきたのかを見ていこう。

『ポケモン サン・ムーン』──親しみやすさと“優しい距離感”

竹が『ポケモン サン・ムーン』で手がけたキャラクターは、「愛嬌」と「抜け感」が魅力だった。
人懐っこさを前面に押し出しつつも、“べたつかない距離感”を保つ描き方は、彼の“間合い”を象徴している。
表情は豊かでありながら、どこか一歩引いた品のあるたたずまい。
その絶妙なバランスが、サン・ムーン特有の「南国の空気感」と重なり、シリーズに新風を吹き込んだ。

『Fate/Grand Order』──神秘性と“格”のあるキャラクター

一方、FGOで竹が描いたサーヴァントたちは、ポケモンとは対照的に「格」と「神秘性」が際立っている。
装飾の細やかさ、瞳の描き込み、ポージングの凛々しさ──全てが“イラストレーター竹”の真骨頂だ。
特に、衣装の装飾や背景との調和を重視し、「キャラクターが立っている空間ごとデザインする」意識が強い。
これは、ジークアクスで見られる“キャラと世界観の一体化”にも繋がる重要なルーツとなっている。

『刀語』──物語性を宿す“重さ”のある線

そして『刀語』では、竹の“重さ”が前面に押し出される。
シンプルな構成線の中に、キャラクターが背負う「宿命」や「哀愁」が滲み出る描写。
派手さよりも“物語の質感”を優先し、線一本一本が「語る」力を持っていた。
ジークアクスでも、キャラクターたちの“沈黙が雄弁に語る”シーンにこの刀語的アプローチが色濃く反映されている。

ジークアクスでの“竹”は、過去作品の集大成

ポケモンの「親しみやすさ」、FGOの「格と神秘」、刀語の「物語性」──それらを融合しつつ、ジークアクスでは更に一歩踏み込んでいる。
キャラクターたちが纏う“静けさ”と“品格”は、竹の集大成であり、ガンダムというフィールドでの新たな挑戦でもある。
彼の線は、今や「ジークアクスそのもののアイデンティティ」となりつつある。

ガンダムにおける“キャラクターデザイン”とは何か？

ガンダムという作品は、しばしば「モビルスーツ＝メカデザイン」ばかりが語られがちだ。
しかし、ガンダムが40年以上愛され続けてきた理由は、紛れもなく“キャラクター”の存在感にある。
その「顔」「線」「目線」が、時代ごとにどんな意味を持ってきたのか──ここで振り返ってみよう。

安彦良和が描いた“人間”としてのアムロ・シャア

初代『機動戦士ガンダム』において、安彦良和が描いたアムロやシャアは、“リアルな少年と青年”だった。
デフォルメされたキャラではなく、「どこかにいそうな人間」として描かれることで、戦争のリアリティが生まれた。
その「生身感」は、ガンダムシリーズが他のロボットアニメとは違う“人間ドラマ”であることを決定付けたのだ。

時代ごとの“顔”が映すガンダムの変遷

Zガンダムでは「陰影の深さ」が増し、キャラクターたちは複雑な内面を抱えた存在として描かれた。
逆シャアでは、「英雄の終わり」を象徴するような静謐なデザインが印象的だった。
その後もSEEDでは“耽美”が、水星の魔女では“ジェンダー感覚”が、それぞれキャラデザインに反映されていく。
つまり「キャラクターの顔」は、その時代ごとの“問い”を映す鏡なのだ。

ジークアクスにおける“竹”の挑戦──顔が語る“観測されない自我”

ジークアクスで竹が挑んでいるのは、「観測されない自我」をどう表現するか、という問いだ。
従来のガンダムキャラは、「世界に対する怒りや葛藤」をその顔で示してきた。
しかし竹のキャラクターは、むしろ「語らない」ことで語る。
無表情にも見える静かな顔立ち。しかしその奥に、「まだ誰にも観測されていない、揺らぎ続ける自己」が息づいている。
それは、現代の“流動的なアイデンティティ”を体現する、新時代のキャラクター造形なのだ。

ジークアクスが提示する“ニュータイプ”の新しい形

「ニュータイプ」とは何か。
それはガンダムシリーズを貫く“問い”であり、“祈り”でもある。
アムロとララァが示した“人の革新”は、時代ごとにその姿を変えてきた。
ジークアクスにおいて、竹が描くニュータイプ像は、過去のどれとも違う“静かで曖昧な揺らぎ”を帯びている。

これまでの“ニュータイプ像”との違い

ファーストガンダムにおけるニュータイプは、「戦争を超えた存在」として描かれた。
Zでは“逃れられぬ業”を背負い、逆シャアでは“人類の希望”として託される。
だが、ジークアクスのキャラクターたちは、そのどれとも違う。
彼らは「ニュータイプであるかどうかすら曖昧」な存在として描かれる。
その曖昧さが、むしろ現代における“リアルな人間性”を映し出しているのだ。

人間性・多様性・孤独感の描き方

ジークアクスのキャラクターたちは、自己を定義しきれない「未完成の存在」として登場する。
ジェンダー、アイデンティティ、関係性──それらを簡単にカテゴライズできない“揺らぎ”を抱えている。
竹の筆致は、その揺らぎを「静けさ」と「品格」で包み込み、「声高に叫ばない多様性」を表現する。
そして、その内面には“誰にも理解されない孤独感”が静かに横たわる。
まさに現代に生きる私たち自身の姿と重なるのだ。

観測されない“私”としてのキャラクター

従来のガンダムは、キャラクター同士が「理解し合うこと」を目指す物語だった。
しかし、ジークアクスでは「理解されないこと」が前提にある。
他者に観測されなくとも、「揺らぎながらも自分であり続ける強さ」──それが、竹が描く新しいニュータイプ像だ。
彼らは、自分自身をも“観測しきれない”存在として、ガンダムという物語を再定義している。
その姿は、まさに「時代の鏡」であり、未来への問いかけそのものだ。

竹×スタジオカラー──“線”と“色”が交差する新時代ガンダム

ジークアクスが持つ独特の質感。
その根底には、竹のキャラクターデザインと、スタジオカラーの映像美が交差することで生まれた“緊張感”と“温度差”がある。
それは、ガンダムの伝統に新たな色彩を加える、まさに“新時代のアート”だ。

エヴァで培った“空間感”とジークアクスの“密度”

スタジオカラーといえば、やはり『エヴァンゲリオン』が象徴的だ。
空間の“抜け感”や「余白の美学」は、エヴァの映像表現で磨かれてきた技術だろう。
一方、ジークアクスでは竹の「密度のある線」が、それとは対照的な緊張感を生み出している。
キャラクターの瞳、髪の流れ、衣装の細部まで“情報量が濃密”に描き込まれ、「観る者を飲み込む」ような存在感を放つ。
この“空間の余白”ד線の密度”が、新時代のガンダムに独自の呼吸を与えている。

作画の方向性が示す“戦闘”と“心象風景”

ジークアクスにおけるバトルシーンは、単なる派手さを超えた“心象風景”として描かれている。
スタジオカラーの「動のダイナミズム」と、竹の「静の緊張感」が交錯することで、「戦場＝内面世界」というガンダム本来のテーマが再解釈されている。
特に、エフェクトとキャラの融合が生む“異質な美しさ”は、視覚的にも精神的にも“観る者に刺さる”新しい体験だ。

スタジオカラーとの相乗効果が生む“新たなガンダム像”

ジークアクスは、竹単独の世界観ではなく、スタジオカラーとの“化学反応”によって完成された作品だ。
従来のガンダムが持っていた「硬質さ」「男臭さ」を、カラーの色彩感覚と竹の繊細な線が“中和”し、新しいバランスを築いている。
その結果、ジークアクスは“世代や性別を超えた普遍性”を獲得しつつある。
これは、単なるデザインの話ではなく、ガンダムという作品の未来像を示唆する、大きな転換点なのだ。

【考察】ジークアクスは“ガンダム”をどう変えるのか

「ガンダムとは何か？」
この問いに、ジークアクスは新しい答え方をしている。
それは、富野由悠季が描いた「抗い続ける意志」を受け継ぎながらも、時代に合わせて“形”を変える試みだ。
ジークアクスが示すのは、「ガンダムという装置の再定義」なのだ。

メディアミックス時代のガンダム戦略

ガンダムは、長らく「宇宙世紀」という世界観に縛られてきた。
しかし、水星の魔女でその枠を打ち破り、ジークアクスは更に「多元世界」としてのガンダムを押し広げる。
これは単なるパラレルワールド展開ではない。
むしろ、「ファン一人ひとりが自分のガンダムを持てる時代」へのシフトだ。
メディアミックスによる“開かれたガンダム”こそ、ジークアクスが目指す未来像なのである。

“閉じた宇宙世紀”から“開かれた多元世界”へ

宇宙世紀は、重厚な歴史と設定で「閉じた物語」としての魅力を放っていた。
だが、時代は流れ、今やファンは「自分だけの視点」を持つことが求められている。
ジークアクスのキャラクターデザインや世界観は、「多元的な解釈」を前提としており、「公式がすべてを語りきらない余白」を大切にしている。
これは、ガンダムという作品の“新しい民主化”と言えるだろう。

竹デザインが持つ“敷居を下げない優しさ”

ジークアクスのキャラクターは、ぱっと見で「優しそう」「親しみやすい」と感じる者も多い。
しかし、決して“媚びる”ことはない。
竹のデザインは、「観る者に迎合しない凛とした佇まい」を保ちながらも、「一歩踏み込めば深く共鳴する優しさ」を内包している。
それは、ガンダムという重厚な世界観に“新しい入口”を作りつつ、作品としての格を決して落とさない美学だ。
この“敷居を下げない優しさ”こそ、ジークアクスがファースト世代にもZ世代にも響く理由なのである。

▶ここでも掘り下げ読み切り
『ジークアクス』と『初代ガンダム』の物語の違いを深掘り解説！
『ジークアクス』のモビルスーツデザインとその進化：初代ガンダムから革新へ

まとめ──「竹が描いたガンダム」は、あなたの心をどう撃つのか

ガンダム ジークアクスが投げかけるのは、「これはガンダムなのか？」という問いであり、「ガンダムとは何か？」を再考させる鏡でもある。
竹のキャラクターデザインは、静かで、品格があり、決して観る者に迎合しない。
しかし、その佇まいこそが、時代に疲れた私たちの心に“そっと寄り添う優しさ”となる。

ガンダムは常に「抗う物語」だった。
宇宙世紀であれ、アナザーであれ、その本質は変わらない。
ジークアクスは、戦争や政治を超えた“人間のあり方”を問い直す最新の試みだ。
そして、竹が描くキャラクターたちは、「観測されないままに在り続ける私たち自身」を映し出している。

だからこそ、ジークアクスを観たとき、人はこう思うだろう。
「これは自分の物語だ」と。
それは、ファースト世代のおじさんにとっても、水星の魔女でガンダムを知ったZ世代にとっても、同じことだ。
ガンダムは、時代と共に形を変えながら、「あなた自身の問い」を撃ち続ける。

ジークアクスは、“ニュータイプ”という言葉を使わずに、「新しい人間の可能性」を示している。
その先にあるのは、誰かに理解されることを超えた、「自分自身を生き抜く強さ」なのだ。

SHINZOU

最後に──
竹が描いたジークアクスは、ガンダムに新しい命を吹き込んだ。
そしてそれは、あなたが“自分だけのガンダム”を見つけ直す旅の始まりでもある。